ひろゆきが語る奥さんとの出会いから『結婚』の決め手まで。『結婚は関係継続のために“せざるを得ない手続き”』。【結婚の哲学】

この記事を執筆した人▶︎yuzuka
恋愛エッセイスト・脚本家として活動。元精神科看護師と夜職の経験あり。Xのフォロワーは14万人を超え、多くの女性から支持を受けている。著書は『埋まらないよ、そんな男じゃ。』他3冊。原作提供・脚本には『五反田ほいっぷ学園』『愛の炎罪』『今、晒してます』がある。ナレソメノートの編集長。
編集長のyuzukaが本当に気になる人だけに、「結婚について」を取材する連載企画、「結婚の哲学」。
今回のゲストは「論破王」の異名を持つ、2ちゃんねる創設者・ひろゆき(西村博之)さん。
現在は、その鋭い洞察力と多彩な知見を生かし、コメンテーターやタレントとして数多くのメディアで活躍している。
ネット世代にとっては、言わずと知れた存在だろう。その独特なキャラクターと強い発言力は、多くの人々に強烈な印象を残してきた。

……だが、である。
彼が放つ言葉や表情だけで、「人間味」や「本質」に迫るのは、意外にも難しい。
これだけメディアに露出していても、冷静で淡々とした語り口の奥にある彼の私生活や内面は、いまだにベールに包まれている。
そこで今回は、そんなひろゆきという人物の「本質」に迫るべく、あえて彼の“結婚観”という切り口から深掘りする取材を行った。
タイトルはずばり、「ひろゆきの結婚の哲学」である。
とはいえ、この取材を企画した時点でうすうす思っていた。
「本人の口から結婚生活の実態や本心を引き出すのは、正直難しいのでは?」と。
だけど、それでは悔しい。せっかくなら、もっと深くまで知りたい。
そこで今回は、彼にとって最も身近な存在であり、作家としても活動する妻・西村ゆかさんにも同じテーマで話を聞き、「西村ゆかの結婚の哲学」としてまとめ、前後編のセット取材とすることにした。
ひろゆきさんが語る過去と、同じ記憶をたどるゆかさん。2人の視点で語られる“結婚”という出来事は、それぞれ全く違う色をしていた。
ひろゆきさんが語る「結婚生活」ってどんな感じ?
ゆかさんの目に映る「ひろゆき」って、どんな人?
そして、2人にとって「結婚」とは、一体どんな意味を持つ?
これは、ひろゆきという“合理主義者”の、意外な温度を探るドキュメントである。
ぜひ、前編・後編を合わせて読んでいただきたい。
結婚までのナレソメは? ひろゆきは妻にいつ「ほれた」のか

yuzuka:では早速、妻であるゆかさんとのナレソメについてお伺いしてもよろしいでしょうか?
ひろゆき:当時たまたま参加したパーティーというか、集まりみたいなのがあって、彼女とはそこで出会いましたね。
yuzuka:ひろゆきさんからアプローチしたんですか?
ひろゆき:いや、確かその集まりの後、Facebookに彼女の名前がたまたま出てきたんだと思うんですよね。
僕、当時は友達申請が来た人を全員承認してて(笑)。会ったことのない人のプロフィールを見て「この人ってどんな人だろう」って想像する、そういう遊びをやってたんです。彼女もその中の1人だったのかな、と思います。
yuzuka:じゃあ、最初からゆかさんに特別興味を持って連絡先を聞いてアプローチをしかけた、という感じではなかったんですね。
ひろゆき:そうですね。たまたま繋がってはいた、っていう感じですかね。
yuzuka:そこからあのネットでは有名な、「唐辛子キス事件」にまで発展するわけですが、その温度感からどういう流れでそんなことになったのでしょう?
ひろゆき:当時、僕は友人と半同棲みたいな感じで住んでて、そこに植木さん(ゆかさん)を呼んだんですよ。で、なんか僕のほうから「唐辛子を順番に食べていこう」みたいなチキンレースを始めて。
yuzuka:なぜ……? なんで急に「唐辛子を順番に食べていこう」ってなったんですか?
ひろゆき:唐辛子って、僕にとってスポーツみたいなものなんですね。からいものって、食べれば食べるほど、からさに耐性がつく。
その耐性をつけるために、普段から唐辛子の粉1kgが家に置いてあって、僕はそれを全ての料理にかけるんです。
yuzuka:どうして耐性をつけたいんですか?
ひろゆき:韓国料理とかで、スゲェからいけどおいしい料理ってあるじゃないですか。おいしそうだから食べたいのに、そこでからさの耐性が付いてないと、食べたくても食べられないわけですよ。
それが嫌なので、僕は唐辛子の耐性をつけるために訓練していたんです。
yuzuka:なるほど。
ひろゆき:だけど、いざチキンレースを始めたら、植木さん(ゆかさん)が「食べない」と言うんで……。
yuzuka:食べたくないですもんね、普通に。
ひろゆき:それで僕は「これはもう無理やり食べさせるしかないな」って……。
yuzuka:それで、キスをして唐辛子を無理やり……口に入れたわけですか。
ひろゆき:はあ。
yuzuka:その流れから突然キスという行動を取るのが飛躍している感じがするのですが、やっぱり、ゆかさんのことを内心では“かわいい”とか“タイプだ”とか感じていたから、そういう行動に出たんでしょうか?
ひろゆき:うーん、どうだろう。ああ、でも、自分では全く意識したことなかったんですけど、友人に「おまえ、デコ広いやつ好きだよね」って言われたことがあって。確かに思い返すと、興味を持つ相手はみんなおでこが広いんですよね。
yuzuka:なるほど。それで言うとゆかさんもおでこがきれいですもんね。じゃあ、ひろゆきさんの中で、無意識に“おでこフェチ”があって、そこに惹かれてキスをしたかもしれないわけですね。
ひろゆき:僕自身は、全く意識してなかったんですけどね。
yuzuka:とはいえですよ、ひろゆきさん。そこからお付き合いを経て、同棲をして、最終的にはゆかさんとご結婚までされたわけじゃないですか。さすがに「おでこ」だけだとそこまで長くは一緒にいられませんよね?
ひろゆき:いや、それがですね。僕、誰と一緒でもストレスを感じずに暮らせるんですよ。
僕は昔から、独り暮らしの期間より誰かと一緒に住んでいる時間のほうが長くて。どんな人と同居してても全然平気なんです。それこそ家にいろんな人が来たりするんで、歯ブラシが何本もあったりしたくらい。だから「彼女だから特別長く一緒にいられた」という感じではないです。
yuzuka:意外です。ひろゆきさんって「自分の世界」がしっかりあるから、誰かがそばにいたら気が散ったり、テリトリーに入られるのを嫌がったりするのかと思ってました。
それだけ誰とでも一緒にいられるというのもまた才能である気がしますが、関係がこじれないように、意識的に“すり合わせ”とかはしていましたか?
ひろゆき:いや、しないですね。というか、自分の好きなことを“自分の世界”でやってるんで、そばにいる人が好きでも嫌いでも、あんまり気にならないんですよ。視界に入らないんです。
結婚の決め手は「記念日が1日で済む」から?

yuzuka:ここまでのお話だと「ゆかさんと結婚を決めた特別な理由」みたいなものは、まだあまりつかみきれていないのですが……。
実際に入籍を決めた日って、どうしてそのタイミングだったんですか?
フランスに移住するに当たってのビザ取得が目的だった、っていう話はメディアでのひろゆきさんの発言からも察してはいたんですけど、それにしても“その日”というタイミングに踏み切った理由はあるのでしょうか?
ひろゆき:なんかその日、うちの近所のガストで友人と朝5時半まで飲みながらしゃべってたんですよ。そしたらその場にいた既婚者の友人が「結婚記念日と誕生日が別だと、両方覚えなきゃいけなくて大変だ」って言ってて。
それ聞いたとき、「あ、じゃあ、結婚記念日と誕生日を一緒の日にしたら1回で済むじゃん」って思ったんです。
で、その日は4月18日で。たまたま翌日、4月19日が彼女の誕生日だったんですよ。そこで “今日だ!”ってひらめいて、家に帰って寝てる彼女を起こして、「区役所行こう」って言いました。
yuzuka:急展開すぎる(笑)。ゆかさん、早朝にたたき起こされて、なんて返してきたんですか?
ひろゆき:「え……? じゃあ証人は? こんな時間に起きてる人いるの?」って。
yuzuka:器が大きい。というか、動じないかっこよさがありますね。起きている方はいましたか?
ひろゆき:はい。おかげさまでそのまま入籍できました。それに、その友人から良いアドバイスをもらったんですよ。
yuzuka:どんなアドバイスを?
ひろゆき:「名字を変えるのはめちゃくちゃめんどくさいよ」って。実はそのとき、僕は妻側の姓である「植木」にしようと思ってたんですよね。名前にこだわりもなかったし。
でも「会社経営者が名前を変えたら登記も全部変わるし、200万円くらいかかる場合もある」って聞いて、「あ、それは無理」ってなりました。
それで結局、「西村」姓のままでいくことにしたのですが、いや、あれはマジでいい助言でした。
結婚生活で大事なのは、部屋とベッドを分けること

yuzuka:実際に籍を入れてみて、生活になにか変化はありましたか?
ひろゆき:全く変わらないですね。
yuzuka:すでに一緒に住んでいたんですもんね。でも逆にそんなに長く一緒にいて、飽きるとか、相手のことが嫌になるとかの悪い変化もなかったですか?
ひろゆき:それもないですね。
yuzuka:そこまでストレスフリーなのは、逆にすごい気がします。
ひろゆき:というか僕、人に期待しないんですよ。だから嫌にもならない。「まあ、こんなもんだろ」って思ってる。
「もっとこうしてくれたらいいな」って思うこともゼロではないけど、別にかなうとも思ってないんで。誰と暮らしても大丈夫なのは、そのマインドがあるからかもしれません。
yuzuka:なるほど。では逆に、過去も含めてひろゆきさんと長く一緒にいることで、相手側がひろゆきさんを嫌になる……みたいなことはなかったんですか?
ひろゆき:それはありましたよ(笑)。でも、僕みたいなめんどくさそうな人間に、そもそも“人に期待するタイプ”の人は寄ってこないんですよね。
だって、僕ってどう見てもややこしいし、「気持ちを受け止めてくれそう」には見えないじゃないですか。
yuzuka:たしかに。ひろゆきさんって、誰に対してもブレずに「ひろゆき全開」ですもんね。うっかり近づくと論破されそうだし、デリケートなタイプの人は安易に近づかないかもしれない。だからこそ、良い意味でフィルタリングされた「お互い無理をせずにいられる相手」が自然と寄ってくるのかもしれませんね。
にしても、そこまで「究極に自然体でいる」って、誰もができることじゃないと思うんですけど、ひろゆきさんは生まれつきそうだったんですか?
ひろゆき:いや、大学生くらいからですね。というのも大学のときに、「自分はどうやっても好かれない人には好かれないタイプの人間だ」って気づいたんですよ。
で、 だったら最初から嫌われといたほうが楽じゃんって決めました。
勝手に「いい人」だと思われて、近づかれて、「そうじゃないじゃん」って幻滅されるのって、お互い損じゃないですか。
だからもう最初からそのままでいることにしたんですよ。自分にクセがあるのはわかってるんで、もう隠さないようにしてます。
yuzuka:それは現代の若者にも参考になる考え方かもしれませんね。無理して好かれにいっても、お互いしんどくなるだけ。オープンなひろゆきさんを知ったうえで一緒に過ごすことを決めたゆかさんだからこそ、長く続けていけるのかもしれない。
他に、ひろゆきさんが結婚生活で「円滑な関係を続けるために気をつけていること」ってありますか?
ひろゆき:うーん、部屋を分けることと……あと、ベッドを分けることですね。
yuzuka:ベッドも分けたほうがいいですか。
ひろゆき:そう。これって結構大事なんですよ。僕、1日中ずっとベッドにいるんですよね。そこで朝方までゲームしたり、映画見たりするんですけど……。
もし相手とベッドが同じだと、横の人が寝れないじゃないですか。そうすると、どっちもストレスが取れない。
でも、そこで部屋やベッドを分けておけば、ゲームしたいときはそっちに行けるし、トラブルが起こっても、冷静になるために物理的に距離を取れるんですよ。それだけでかなりストレスは減ります。
yuzuka:確かに、狭い空間でずっと一緒にいると、何もなくても地味にストレスがたまりますもんね。 感情の逃げ場がないというか。“逃げられる場所”を作っておくのは、大事な工夫かもしれませんね。
「結婚」という制度は人間には向いていない

yuzuka:ではひろゆきさんにとって、実際に結婚してみて感じた「メリット」や「デメリット」ってありますか?
ひろゆき:ないですね。メリットもデメリットも。
yuzuka:じゃあ、結婚を通して「誰かと一緒にいられること」にはメリットは感じますか?
ひろゆき:うーん。僕は高校時代からずっと、誰かと一緒にいるのが当たり前だったんですよ。
大体、友人と一緒に暮らしてて、常に誰かが周りにいる環境。結婚したから何か変わったというよりは、たまたまその「一緒にいる相手」が彼女になって、その状況が続いている、という感覚に近い。メリット、ではないかな。
yuzuka:なるほど。でも当然、ゆかさんには他人とは違って「特別な愛」を感じるわけですよね?
となると、ひろゆきさんにとって「愛」ってなんですか?
ひろゆき:うーん……「これを触ると気持ちいい」みたいな、自分の「快楽」はある。だけど、「愛」なんて、人間が勝手に定義したものだと思ってますね。存在してるかどうかは疑問です。実態のないものをそれぞれが勝手に定義しているだけ。
yuzuka:とはいえ多くの人が、結婚という制度に「愛」という情緒を持ち込みたがりますよね。いわゆる「好き」っていう強い感情がないと、結婚する意味がないって思っている人も多い。となると、やはり「愛」は存在するんじゃないですか?
ひろゆき:いや、というか男は基本、結婚したくないじゃないですか。
yuzuka:そうなんですか?
ひろゆき:はい。でも、関係を継続するには「結婚」という形を取らざるを得ない。
で、女性は恋愛の延長に「愛」があると思ってるから、「愛してる」って言わないと続けられない。それだけの話な気がします。
yuzuka:つまり、男性にとっての「結婚したい」や「愛している」は、異性としての関係を続けるための“建前”。
ひろゆき:そうですね。男性の“賢者モード”って、女性にはあまり理解されないと思うんですけど、性欲が消えると、本来は相手への興味が一瞬でゼロになるんですよ。
だからこそ、そもそも「結婚」って制度自体が、人間には向いてない気がします。したい人がすればいいけど、すべき理由は特にない。
yuzuka:でも、社会を回すって意味では、ある種の“つなぎ”として結婚制度は必要ですよね。お互いに責任を持って子どもを育てる、みたいな。
ひろゆき:それは、社会にとって必要なことであって、個人にとって必要かと言われるとわかりませんね。
yuzuka:なぜそこまで、ベースに「結婚したくない」が先行する男性が多いんだろう。
ひろゆき:めんどくさそうだからじゃないですかね。男って、美容院行くのすら嫌がるでしょ。やったことがないこと、しかもメリットが見えにくいことにリソースを割くのって、本当に腰が重いんです。
しかも結婚に関しては、メリットは見えづらいのに、デメリットはめちゃくちゃ目立つ。
親戚付き合い、自由の制限、不倫NG、家計の共有……。そういうリスクばっかり先に見えてしまうのもあると思います。
yuzuka:言われてみればSNSにもそういう声は多い。その辺りは私たちが適切に結婚の良さを発信していきたい理由でもありますが……じゃあ、ひろゆきさん自身も、実際にゆかさんと結婚して「よかったな」と思う瞬間って、あまりない?
ひろゆき:うーん……あ、でも、ご飯がおいしいですね。
yuzuka:お、充分じゃないですか。ゆかさんのどんな料理が好きなんですか?
ひろゆき:いろいろ作ってくれるんですけど、全部ハズレがないんですよ。全部、おいしい。あと、話していて反応がおもろいです、彼女は。
yuzuka:料理がおいしくておもろい。最高じゃないですか。最後にめちゃくちゃいい話が出てきて安心しました(笑)。
ひろゆき:それはよかったです(笑)。僕にとってはそんなに特別なことじゃないんです。一緒にいるのがたまたま彼女で、たまたま別れなくて、たまたま必要だから制度として結婚をした。そんなものだと思うんですよね、「結婚」って。
結婚に、メリットはない。
確かに、結婚は本来ただのシステム。
税制上のメリットがあったり、子どもを育てる責任を社会的に担保したり。制度として機能しているのなら、使うかどうかは各自の判断でいいし、それによって人が幸せになるかは、また別の話。
確かにその通りで、言われてみれば納得することはできる。
私が最後に「ひろゆきさんにとって、結婚とは?」と問いかけると、彼は少し間を置いて「手続き」と答えた。
実に、ひろゆきさんらしい返答だ。
ただ、インタビューを通して感じたのは、感情に触れようとすると、ふわりとかわされてしまうような、雲をつかもうとして、指の隙間からスルリと抜けていくような……そんな感覚。
そこに本当に「感情」が存在しないのか、それとも私がまだ彼の“そこ”にたどり着けていないだけなのか。答えはわからない。
ただ、1つ手がかりがあるとすれば、この後に登場する、西村ゆかさん──彼の妻の語る「ひろゆき」の姿だ。
「一緒にいるのがたまたま彼女で、たまたま別れなくて、たまたま必要だから制度として結婚をした」
そこに、あまり愛や情緒を感じない言葉。
しかし、ゆかさんの目に映るひろゆきは、本人が語る“ひろゆき像”とは、また全く違う色をしている。
ぜひ、後編も続けて読んでほしい。

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