結婚で承認欲求はどう変わる? 男女・年代別データが示す「自己呈示」の変化
SNSやマッチングアプリでの「いいね」や周囲からの評価に、少し疲れを感じてはいませんか?
「自分を良く見せたい」という欲求は誰もが持つものですが、実はそのエネルギーは、人生のステージによって大きく形を変えていきます。
ナレソメ総研による男女471名を対象とした最新調査では、独身時代に膨らみがちな「自己プロデュース欲求」が、結婚というイベントを経てどう変化するのかを数値化しました。
データで見えてきたのは、結婚がもたらす「評価からの解放」と「自然体へのシフト」という意外なメリットでした。
独身時代に膨らむ「注目獲得欲求」と、既婚者の「心理的安定」
今回の調査では、男性207名(未婚159名・既婚48名)、女性264名(未婚133名・既婚131名)を対象に、「周囲から注目を集めたい」という内面的な欲求(注目獲得欲求)と、「周囲からどう思われたいか」という外面的な表現(自己呈示)の両面から分析を行っています。
注目獲得欲求とは、承認欲求の一部で、文字通り「周囲の注目を集め、自身の存在を誇示したい」という欲求を指します。
つまり、「どれだけ認められたいか」と「どのように見られたいか」の両方を可視化することで、ライフステージによる変化を立体的に捉えています。
調査の結果、最も顕著に現れたのは、性別による違いよりも「結婚しているか否か」というライフステージの差でした。
男女ともに既婚者よりも未婚者のほうがスコアが高く、未婚期において注目獲得欲求がより強くなる実態が浮き彫りとなっています。

未婚女性は「3.01」と他群より注目獲得欲求の得点が高い傾向が見られました。
未婚女性にとって社会や周囲から「存在を認められること」は、自己肯定感を維持する上で非常に重要な意味を持っていることが推測されます。
反対に既婚男性は「2.70」と全属性で最も低い数値を示しました。
これは結婚というライフイベントが、個人の注目獲得欲求にブレーキをかける大きな転換点となる可能性が示唆されています。
独身時代は、自分を社会にアピールして「誰かに見つけてもらいたい」「選ばれたい」という外向きのエネルギーを必要とします。
しかし、結婚して特定のパートナーを得ることで、不特定多数からの注目の優先順位が下がり、精神的な充足の矛先が「外」から「内(家庭)」へと切り替わる心理的メカニズムが働いていると考えられます。
ライフステージの変化に伴い、こうした欲求の水準自体が変動していくのかもしれません。
性別の違いより「独りか、2人か」が欲求を書き換える
本調査における興味深い発見は、性別による差よりも「結婚しているかどうか」による差のほうが顕著だという点です。
- 性別で比較:未婚男性(2.94) vs 未婚女性(3.01) → 差 0.07
- 婚姻状況で比較(男性):未婚(2.94) vs 既婚(2.70)→ 差 0.24
数値で見ると、婚姻状況による差は性差の約3.4倍に達します。
つまり、「男だから目立ちたい」「女だから認められたい」といった性別特有の性質よりも、「特定のパートナーという絶対的な味方がいるか」という社会的・心理的環境の変化のほうが、人の注目獲得欲求を書き換える主要な要因の1つとなっていると考えられるのです。
次からは、より具体的に「周囲からどう思われたいか(自己呈示)」の内容を男女別に深掘りしていきます。
【男性】「外見の武装」から「内面の包容力」へ:結婚がもたらす自己呈示の変化
25歳から39歳までの男性のデータを分析すると、独身時代と既婚後では、自分をプレゼンするための「武器」が根本から入れ替わることがわかりました。
未婚男性が「おしゃれ」や「知性」といったスペックで自分を武装するのに対し、既婚男性は年齢を重ねるほど「楽しさ」や「頼りがい」といった、周囲を包み込むような実利的な内面性を重視する傾向が強まっています。


※スコアの見方: 各項目5.00点満点。数値が高いほど「周囲にそのイメージを持たれたい」という意欲(自己呈示欲求)が高いことを示します。グラフは既婚-未婚の差。
「おしゃれ」は独身の特権? 既婚男性の関心は激減
全年代を通じて最も顕著な差が出たのが「おしゃれな人だと思われたい」という欲求です。未婚男性に比べ、既婚男性のスコアはかなり低く、特に30代前半まではその差が顕著(マイナス0.59)です。
未婚男性にとって「外見を整えること」は、異性をひきつけ、社会的な市場価値を示すための不可欠な投資。しかし、結婚というゴールを境に、「外見で飾り立てて評価を得る」ことへの優先順位は、他の項目へ取って代わられる様子が数字に表れています。
30代後半・既婚男性に顕著な「包容力アピール」の急上昇
30代後半に入ると、既婚男性の自己呈示は「人間力」重視へとシフトします。
「おもしろい」「楽しい」「頼りがいがある」「思いやりがある」という4項目で、既婚者のスコアが未婚者を大きく逆転します。
特に「楽しい(4.00)」というスコアは全年代・全項目の中でも極めて高く、自分自身が人生を楽しみ、周囲をも明るく照らす存在でありたいという欲求が見て取れます。
これは、父親としての自覚や、職場での責任ある立場を反映し、「一緒にいて安心できる、器の大きな男」を目指す成熟した自己像の表れと考えられます。
未婚男性が守り抜く「有能さ」というプライド
未婚男性が一貫してこだわり続けているのが「頭が良いと思われたい(知性)」という項目です。全年代を通じて3.5前後の高い水準を維持しており、既婚男性の数値を常に上回っています。
社会という戦場で個の力で生き抜く独身男性にとって、「有能であること」「知性的であること」は、自分を定義するアイデンティティであると考えられます。
対照的に、既婚男性はこの欲求が未婚者より低い傾向にあり、「他者からどう見られるか」を過度に意識する必要が薄れた可能性が示唆されます。
家庭という安らげる基盤を得たことで「常に有能であらねばならない」というプレッシャーや過度の競争環境から距離をおけるようになった結果とも考えられます。
【女性】「対等なパートナー」を意識する20代、理想の自分を全方位に演出する未婚30代:ライフステージで激変する自己呈示
女性の自己呈示(周りからどう思われたいか)を分析すると、男性よりもライフステージの変化に伴う起伏が激しいことが判明しました。
20代後半では、家庭という新たな環境下で「パートナーと切磋琢磨したい」という意欲が自己呈示の源泉となる一方で、30代に入ると既婚者は安定期(欲求の落ち着き)に入ります。
対照的に、30代後半の未婚女性は、あらゆる項目で「理想の自分を多角的にプロデュースしたいという欲求」が爆発するという、非常に鮮明なコントラストが浮き彫りになりました。
【20代後半】制約の中でも「自分を失わない」。既婚女性が示す有能さへのこだわり
25〜29歳の層では、未婚女性と既婚女性の得点差はまだそれほど大きくありません。
しかし、その内訳には興味深い現象が見られます。
「おもしろい」「頭が良い」「精神的に強い」といった項目で、既婚女性の数値が未婚女性をわずかに上回っているのです。


※スコアの見方: 各項目5.00点満点。数値が高いほど「周囲にそのイメージを持たれたい」という意欲(自己呈示欲求)が高いことを示します。グラフは既婚-未婚の差。(以下同)
この背景には、「自己呈示の矛先の変化」があると考えられます。
まだ相手が決まっておらず、多くの男性の視線を意識する必要がある未婚女性に対し、既婚女性には「パートナー」という明確な対象が存在します。共働きが主流の現代、キャリアの最前線にいる夫と「高め合える対等な相手でありたい」という願いが、知性や精神的強さへの欲求につながっていると推測されます。
また、自由な未婚女性と比較し、結婚後は出産などのライフイベントで、物理的にキャリアなどへの制約を受けやすいもの。20代既婚女性はそうした心理的・環境的変化にぶつかる中で「社会的な有能さを失いたくない」「自分はまだやれる」という思いの強さが、「頭の良さ」や「強さ」といった自己呈示として現れているのではないかと考えます。
【30代前半】未婚と既婚の「理想の描き方」に差が広がり始める
30代に入ると、未婚女性と既婚女性の差が明確に広がり始めます。


30〜34歳の既婚女性は、未婚女性に比べて自己呈示の得点が全般的に低い傾向にあります。 特に「頼りがいがある(差 -0.62)」「おもしろい(差 -0.48)」といった項目で数値が大きく下がります。
これは男性と同様、結婚という社会的承認を得たことで、「他人にどう評価されるか」という緊張感から良い意味で解かれ、等身大の自分を受け入れ始めている様子がうかがえます。
ただし、「容姿が良い」「楽しい」といった項目は依然として高水準を維持しており、「1人の女性として美しく、毎日を楽しみたい」という根源的な欲求は、既婚後も大切にされているようです。
【30代後半】未婚女性の「圧倒的なセルフプロデュース願望」が爆発
30代後半に差し掛かると、ほぼ全方位において未婚女性の数値が既婚女性を大きく上回るようになります。


特に未婚女性のデータには、驚くべき「自己イメージへの熱量」が見て取れます。 「おもしろい(4.19)」「楽しい(4.25)」「頭が良い(3.94)」など、ほぼ全ての項目で年代・性別問わずトップクラスの数値をたたき出しています。
これは単に「若さ」や「外見」での評価だけでなく、「人間としての知性」や「自立したライフスタイルの充実」での評価も求めることで、個としての市場価値とアイデンティティを確立しようとする、非常に高い自己実現意欲の表れと言えます。
同時に、競争環境の中で自己価値を維持・証明し続けようとする心理的な緊張の高さを反映している可能性もあります。
「ハイスペック女性」と「頼られたい男性」のミスマッチ?
30代後半の未婚女性が高い意欲を見せる「おもしろい」「頼りがいがある」「頭が良い」という項目は、実は既婚男性が「こうありたい」と願う理想像と見事に合致しています。
婚活や恋愛の場において、女性側が「自立した有能さ」を強く呈示しすぎることで、男性側の「頼られたい」という欲求とぶつかり、心理的な緊張状態(コンフリクト)が生じやすい背景がこのデータから推測されます。
未婚女性は「対等で自立した関係」を志向し、未婚男性は「頼られることで役割を実感したい」という、役割期待のズレが衝突している構造と捉えることができます。
▶︎参考記事
自分を「着飾る」ことから「自然体で過ごす」場所へ。データから見えた結婚の真価
今回の調査結果を通じて、男性は「外見の武装」から、周囲を包み込む「頼もしさ」へと魅力の軸足を移し、女性は年代ごとに「自分をどう定義するか」というセルフイメージを激しく変化させていくことがわかりました。
特に未婚女性においては、年齢を重ねるごとに「こう思われたい」という理想が全方位に強く波及し、自分自身への期待値が膨らみ続けていく傾向が見て取れました。
しかし、既婚者のデータが示すのは、そうした「理想の自分をプロデュースし続ける緊張感」からの解放です。
結婚し、特定のパートナーという絶対的な理解者を得ることで、「おしゃれに見られたい」「常に有能でいなければ」といった過度なセルフイメージへの執着は、自然と落ち着きを見せ始めます。
「常に評価され続けなければならない」という外向きの意識を少し緩め、「ありのままの自分でいられる居場所」を手に入れること。
言い換えれば、独身期における「不特定多数から評価される市場(評価市場)」から、既婚期における「特定の相手と関係を築く市場(関係市場)」へと、人生の主戦場が移行するということです。
この“ゲームのルールの変化”こそが、承認欲求の在り方を大きく書き換えていると考えられます。
数字の裏側に隠されたこの心理的な安定感こそが、現代における「結婚の良さ」の1つなのでしょう。
<出典記入方法>
本調査結果を引用する場合、「あなた自身に関する調査2026(ナレソメ総研調べ)」及び、本記事URLを必ず明記してください。
<調査方法>
あなた自身についてのアンケート調査
<調査期間>
2026年3月5日(木)〜2026年3月15日(日)
<調査対象>
成人男女
<回収サンプル数>
471名
ナレソメ総研




