「付き合ってもいないのに忘れられない」。長年の片思いを終わらせ、次の恋に進む方法

恋愛や婚活、そして結婚後のパートナーシップ。人生のステージごとに尽きることのない、多種多様なお悩み。

本連載『山崎先生の恋愛・婚活お悩み相談室』では、そんな恋愛・婚活・パートナーシップに関するお悩みについて、ナレソメ予備校恋愛心理学者・山崎独自の視点と科学的なデータをもとに解決策を提示します。

恋愛心理学者・山崎
富山県出身。筑波大学卒業。在学中から「恋愛心理学」を研究し、特に遠距離恋愛や関係継続、自己肯定感の分野を得意とする。認定心理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種を保持し、恋愛を起点としたQOL向上のノウハウを武器に、教育機関や企業の人事領域で講演・相談支援を行うなど幅広く活動。自身も二度の遠距離恋愛や婚約・婚約破棄を経験し、その学びを生かして年上シングルマザーとの年の差婚を果たす。現在は幸せな結婚生活を送りながら、恋愛心理学の知見を社会に還元し続けている。

今回のお悩み

もう何年も片思いしている人がいます。
付き合えてはいない、かといって完全に拒絶されたわけでもない。ときどき2人で食事をするくらいの曖昧な距離感が続いています。

頭では「ときどき会ってはくれるけれど、脈はなさそう」「諦めて次の恋に進んだほうがいい」とわかっているのです。それでも、彼から連絡がくるとまだチャンスがあるのではないかと期待してしまったり、他の女性の影がないかSNSをチェックして一喜一憂したりする日々から抜け出せません。
彼のことは好きだけれど、苦しいです。
かなわないとわかっている恋に執着してしまうのは、なぜなのでしょうか?
苦しい恋を諦め、次に進むための心の切り替え方を教えてください。

長い間、片思いしている相手がいる。
たまに連絡もくるし、2人で会えるから「もしかしたら……」と期待してしまう。
でも、関係が進展するわけでもなく、そろそろ次に行ったほうがいいと思いつつも頭から離れない……。

そんな「未完了の恋」に悩んでいる人も多いのではないでしょうか?

なぜ人は「付き合ってもいない人」を何年も引きずってしまうのか。そして、長年の片思いを終わらせて次のステップに進むための具体的な方法を、恋愛心理学者・山崎がエビデンスをもとに解説します。

なぜ「付き合っていない人」を何年も忘れられないのか?

交際して深く関わったわけでもないのに、なぜ何年も1人の人を思い続けてしまうのでしょうか。それには、大きく3つの理由が考えられます。

理由1:白黒ついていない「未完了の状態」だから

人は、きれいに完結した出来事よりも、中途半端に終わってしまった出来事を強く記憶に留める傾向があります。これを心理学では「ザイガルニック効果(ツァイガルニク効果)」といいます。

またナレソメ総研のデータによると、交際して別れた場合、しっかりと話し合って別れたカップルよりも「自然消滅」で別れたカップルのほうが、未練が残りやすいことがわかっています。
はっきりとフラれたわけではない片思いの失恋は、このデータでいうと、ちゃんとした理由がなく中途半端に終わった「自然消滅」に近い状態と考えられます。

自然消滅の場合、男女ともに「また会いたい」という再会願望、「ちゃんと話し合いたい」という話し合い願望が強く出ます。
さらに女性の場合は、見返し願望も強く出る傾向にあります。ここでいう見返し願望とは、「相手がリードしてくれなかったから自然消滅した。曖昧なまま終わらせた相手を見返したい」「私を大事にしてくれなかった相手を見返したい」という気持ちのことです。

はっきりとフラれたわけではない長年の片思いは、自然消滅と同様に「なぜダメだったのか」という明確な理由がないため、「まだできることがあるのではないか?」と脳が思考コスト(人間が物事を考え、判断する際にかかる時間や労力)を割き続けてしまいます
結果として、心残りが生じ、相手のことを忘れられなくなってしまうのです。

理由2:「つながりを失う」ことへの本能的な恐怖があるから

2つ目の理由は、人間の根本的な欲求に関わっています。

まず、前提として私たち人間は誰かとつながっていたい生き物です。「一匹狼」や「孤高」といった言葉が生まれたのも、それが一般的ではないからこそ。本来の私たちは、それぐらい独りではいられない、いたくない存在なのです。

その観点で考えると、片思いは相手とつながりたいけど、つながりきれていない状態です。そのため「本当はつながりたいのになぁ……」という未練が残ってしまうのだと考えられます。

また、あえて最初からかなわない恋愛を選んでいる可能性もあります。これは「つながりを失いたくない」という人間の根本的な欲求が関係しているからです。

イギリスの精神分析家であるジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論」によると、私たち人間は親に守られて育つため、「親とつながっていたい、つながりを失いたくない」という欲求が最初に生じます。

だからこそ、「手に入れる喜び」よりも「失う苦しみ」を大きく見積もってしまいがちです。あえて「かなわない恋」を選びたくなるのは、別れによる喪失感を避けるための、一種の生存戦略だと考えられます。

最初から何も手に入れなければ、得られる喜びがない代わりに、それを「失う」痛みを感じることは確かにないですからね。

※画像はイメージです

理由3:恋愛で傷つく恐れがあるから

恋愛で傷つく恐れがあることも理由の1つです。
想いを胸に秘めている限り、失恋という結末に直面せずにいられます
自分から積極的にアピールしたり告白したりしないため、相手に拒絶されて傷つくことを回避できるからです。恋愛で傷つくのが怖いからこそ、最初から傷つかない恋を選んでいるのです。

恋愛経験がない状態で最初からかなわない恋を選ぶ人もいれば、過去に恋愛で傷ついた経験があるからこそ、これ以上傷つくのが嫌でかなわない恋を選ぶ人もいるでしょう。例えば、最近はChatGPTなどのAIと恋愛・結婚する人もいますが、これには「人間より、全肯定してくれるAIとの恋愛のほうが傷つかないから」という心理があると考えられます。

※画像はイメージです

▶︎AIとの恋愛・結婚について詳しく解説した記事はこちら

「諦めるタイミング」はいつ? 相手の態度で決めるのはNG!

好きな人を諦めるタイミングはいつが良いのでしょうか?

結論から言うと、諦めるタイミングは自分で作るべきです。

例えば、「進学したら」「職場が変わったら」「LINEの既読がつかなくなったら」「会う約束ができなくなったら」。
そんな「諦めるきっかけ」を探している人も多いのではないでしょうか。

厳しいかもしれませんが、「こういうきっかけがあったら忘れよう」と考えている間は忘れられません。諦めるタイミングを外的な要因や相手の態度に委ねず、自分で区切りをつけることが大切です。

自分で区切りをつけるタイミングは「諦めるべきか?」と思った、その時です。
少しでも「諦めたほうがいいかなぁ」と思ったのなら、諦める。迷いが出た時点で、もうそれ以上迷うのはやめましょう。

恋愛はお互いに好きな気持ちがあるから成就するものです。数字で考えてみましょう。例えば、恋がかなう確率として、相手が振り向いてくれない時点で相手の気持ちが0%、自分が好きという気持ちが100%だとしたら、それぞれの気持ちを足して2人で割ると(0 + 100)÷2=50%。しかし、自分が「諦めるべきか?」と悩み始めた時点で、自分の気持ちは100%から徐々に減り、50%を切ります。その恋がかなう確率が50%を下回った時点で諦めたほうが賢明といえます。

長年の片思いにピリオドを打つ具体的な方法

では、実際に長年の思いを断ち切り、前に進むためにはどうすればいいのでしょうか。
ここからは、片思いを終わらせるための効果的な方法を解説します。

まず前提として、「好きな人を忘れる」を目標にしないことが大切です。好きな人を忘れようとしたらいけないの? と意外に思うかもしれませんが、無理やり気持ちに区切りをつけて忘れようとすることは逆効果といえます。

その理由は、失恋から立ち直るための「失恋ストレスコーピング(※1)」という対処法からも説明できます。
コーピングとは、ストレス要因に対処し、心身の負担を軽減しようとする行動のことです。

※1 参考:加藤 司(2005)失恋ストレスコーピングと精神的健康との関連性の検証

失恋ストレスコーピングとは

失恋ストレスコーピングには、3つのスタイルがあります。

  1. 未練型コーピング
  2. 拒絶型コーピング
  3. 回避型コーピング

まずは3つのコーピングスタイルについて、それぞれ解説します。

1. 未練型コーピング

未練型コーピングとは、例えば「思い出の場所やモノに触れる」「楽しかったことを思い出す」などの行動を指します。
片思いを諦めようと思いながらも、つい、好きな人との思い出の写真を見返したり、一緒に食事をしたときのことを思い出したりしてしまうことはありますよね。
誰もがやってしまいがちなこの行動ですが、実はこれが失恋からの立ち直りを遅らせてしまうのです。

これらの行動を取ることで「理想化のわな」に陥ってしまいます。理想化のわなとは、会っていない期間に、自分の頭の中の理想像に好きな人を勝手に近づけてしまうことです。
恐ろしいことに、自分の認知をゆがませ、好きな人への評価がポジティブなほうへ変化するため、さらに頭から離れなくなります。

では、理想化のわなに陥らないために、ここで少し冷静になって考えてみましょう。

好きな人との出来事を思い出してしまうとき、その思い出は本当に楽しいことばかりだったでしょうか? 「なんだこの人……」と思うようなことや、嫌な気持ちになるようなことも多少はあったのではないでしょうか?

好きな人との思い出は、そういったネガティブな出来事が抜け落ち、全て楽しかったことになる傾向にあります。
そのため、好きな人との楽しかったことを思い出すときは2割減、理想をいえば5割減で考え、思い出を美化していることを自覚することがポイントです。

※画像はイメージです

2. 拒絶型コーピング

拒絶型コーピングは、好きな人を忘れよう忘れようと必死になっているときにやってしまう傾向があります。

好きな人を無理に忘れようとすることで、次第に「相手を見返してやろう」と思うようになったり、相手を嫌いになり恨んだりするようになります。相手を好きだった気持ちを否定するかのように、「嫌いだ」と思うようになるのです。

驚くべきことに、私たち人間は「好き」にも「嫌い」にも意識の強さを同じように使います。だから、嫌いだと思えば思うほど、好きな人の存在が意識の中で強くなってしまいます。つまり、忘れようとしているのに嫌いになるのは、忘れることになっていないのです。

そのため、好きな人を無理に忘れようとする必要はありません。

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3. 回避型コーピング

回避型コーピングは、頭や体をフルに使って恋愛に関係のない行動をすることと、新しい出会いを探すことです。恋愛に関係のない行動とは、例えば気晴らしに運動する、趣味に没頭する、などです。

そもそも、失恋とは自分の中に残っている感情・思考の話です。心理学的に、感情を感情で解決するのも、ネガティブな思考をポジティブな思考で解決するのも難しいといわれています。だから、あえて行動に変える、というのがこの回避型コーピングの考え方です。

未練がましくならないようにする、嫌いな気持ちを持たないようにする、ということではなく、そういった気持ちになったときに回避型コーピングの行動を取ることが大切なのです。

※画像はイメージです

失恋から立ち直りたいなら回避型コーピング

ここまで3つのコーピングスタイルについて解説しました。
結論から言うと、片思いを断ち切り、失恋から立ち直るためにやってほしい方法は回避型コーピングです。

それぞれの失恋コーピングスタイルは、失恋後のストレス量や回復のスピードに異なる影響を与えます(※1)

まず、未練型コーピング・拒絶型コーピングは、失恋からの回復を遅らせたり、ストレスを増大させたりします。これでは、つらい時期が長引いてしまいます。
一方で、回避型コーピングは回復を早め、ストレスを減少させます。それにより、完全にスッキリした状態でなくても「失恋しちゃったな」「昔好きだったな、仕方ないな」と思えるようになるのです。

なぜ、それぞれのコーピングスタイルがストレス量や回復スピードに異なる影響を与えるのか? そこには心理的距離(記憶の中の相手との距離)の違いが関係しています。

上図のとおり、未練型コーピングを実践すると心理的距離が最も近い状態になり、回避型コーピングをすると最も遠い状態になれます。

心理的距離を最も遠い状態にできるコーピングスタイルを身に付けること、つまり回避型コーピングをすることで、失恋から立ち直りやすくなるのです。

報われなかった恋を自分の成長につなげる方法

報われなかった、この片思いの期間はムダだったのかな……? と落ち込む人もいるかもしれません。
しかし、人は失恋によって成長するものです(※2)。報われなかった恋愛も決してムダになるわけではないのです。ただし、これには条件があります。

相手と一定の関わりをもち、告白してフラれて玉砕したのであれば成長につながります。一定の関わりとは、例えば、2人きりや3〜4人のグループで食事に行っており、告白したらうまくいく可能性を少しでも感じられる関係を築けていた、ということを指します。その上で告白したのであれば、たとえ結果が思わしくなかったとしても、成長につながるといえます。
厳しい現実ですが、何も行動せずに諦めてしまった場合は成長できません。

さらに、報われなかった恋によって成長するためには、上述した回避型コーピングをすることがポイントになります。

失恋後に回避型コーピングをすることで心理的離脱をし、相手から心が離れていきます。そして、心が離れたあとに首尾一貫感覚が高まります。首尾一貫感覚とは、下記3点を指します。

  1. 出来事に意味づけができるようになる:単に「フラれて悲しい」で終わるのではなく、「あの片思いの時間は無駄じゃなかったんだな」と思えるようになること。
  2. マネージャビリティ:自分がどうやって立ち直っていけばいいのか、その道筋を描けるようになること。「この人に話を聞いてもらおう」「今は趣味に時間を使おう」など、自分のリソースをうまく使って、自らの力で立ち直る能力が身に付く。
  3. 自分の人生を「他責」にしなくなる:ストレスやつらい出来事にも意味を見いだせるようになり、うまくいかないことを他人のせいにしなくなる。自分を律し、自分にできることをやっていける人間へと成長できる。

つまり失恋後に回避型コーピングをすることにより、出来事に意味づけができ、うまく立ち直る力を持ち、自責して自分にできることをやっていける人間へと成長できるのです。
ちなみに、未練型コーピングと拒絶型コーピングでは成長できないこともわかっています。

※2 参考:浅野良輔、堀毛裕子、大坊郁夫(2018)人は失恋によって成長するのか ―コーピングと心理的離脱が首尾一貫感覚に及ぼす影響

自分の人生を前に進めるために、自分の意思で「決着」をつける。そうした覚悟で「未完了」を「完了」に書き換え、区切りをつけたときこそ、あなたは人として成長し、新しい幸せに向かって歩き出せるでしょう。

失恋からの立ち直り方については、ナレソメ予備校入会後に視聴できる動画講座「ナレソメスタディ」の『失恋お焚き上げ講座』で詳しく解説しています(※2026年3月現在)。もし今、あなたの中に「失恋から立ち直り、幸せな結婚をしたい」という気持ちが少しでもあるのであれば、ぜひ無料面談にお申し込みください。

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