横並びは親密度を高めるってホント!?
ちまたで、まことしやかにささやかれる“恋愛雑学”や“テクニック”。「それって本当に正しいの?」「ただの思い込みじゃない?」と気になったことはありませんか?
この企画では、そんな恋愛にまつわるうわさや通説を、ナレソメ予備校の恋愛心理学者・山崎独自の視点と科学的なデータをもとに徹底考察し、解説します。
恋愛心理学者・山崎
富山県出身。筑波大学卒業。在学中から「恋愛心理学」を研究し、特に遠距離恋愛や関係継続、自己肯定感の分野を得意とする。認定心理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種を保持し、恋愛を起点としたQOL向上のノウハウを武器に、教育機関や企業の人事領域で講演・相談支援を行うなど幅広く活動。自身も2度の遠距離恋愛や婚約・婚約破棄を経験し、その学びを生かして年上シングルマザーとの年の差婚を果たす。現在は幸せな結婚生活を送りながら、恋愛心理学の知見を社会に還元し続けている。
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「横並びは親密度を高める」ってホント!?
「デートではカウンター席を選びましょう」。
デートで使えるテクニックとしてあまりにも有名なこの説。
実際のところ、どれほど効果があるのでしょうか? 恋愛心理学者・山崎がエビデンスをもとに語ります。

【考察サマリー】「横に座れば親密になる」とは言い切れない
今回のテーマである、「横並びは親密度を高める」という説について、私は「本当とは言い切れない」と分析します。
本当とは言い切れない理由は、心理学的に横並びで親密になれることを完全には証明できていないからです。
一方で、この説が完全な誤りとも言えないのは「身体化された認知」という現象があるからです。身体化された認知とは、体で感じた物理的な感覚が心理的な評価に影響を与える現象を指します。
また、一般的に「スティンザー効果(アメリカの心理学者バーナード・スティンザーが提唱した理論)を活用して、横並びで座って親密度を高めよう」という恋愛テクニックが広まっていますが、「横に座れば親密になる=スティンザー効果」ではありません。実は、多くの人がスティンザー効果の因果関係を逆に捉えています。
そのため、結論からお伝えすると「横に座れば親密になる」とは言い切れない、というのが私の見解です。
スティンザー効果の真実や身体化された認知という現象、そしてお見合いやデートでおすすめする座る位置について解説します。
スティンザー効果の真実とは?
まず、「横並びで座ると親密になる=スティンザー効果」という考え方が間違っている理由を解説しましょう。
スティンザー効果を正しく捉えると、「横に座ったから親密になる」のではなく、「親密だから横に座りたくなる」のが本来の心理です。
なぜなら、スティンザー効果はもともと会議における行動傾向を分析したものであり、座る位置は相手との関係性によって無意識に選ばれるものだからです。
具体的に、スティンザーが発表した研究では、以下の3つの傾向が示されています(※)。
- 以前に議論を戦わせたことのある相手がいると、その対面の席を選びたくなる
- 誰かが発言した後に発言する人は、反対意見を述べる傾向がある
- 議長のリーダーシップが弱い場合は正面の人と、リーダーシップが強い場合は隣の人と話す傾向がある
※参考:Steinzor, B. (1950)「The spatial factor in face to face discussion groups.」
この1つ目の傾向が、いつの間にか「対面に座ると敵対する、横並びに座ると親密になれる」という恋愛テクニックにすり替わり、因果関係が逆転して広まった可能性があります。
- 本来のスティンザー効果:以前に議論した相手の対面に着席しやすくなる
- 因果関係が逆になった恋愛テクニック: 横に座ったら親密になる
- 本来の心理:親密な関係だから横に座りたくなる
結論として、因果関係を逆に捉えた「スティンザー効果があるから、横に座れば仲良くなれる」というテクニックを過信するのは禁物です。
物理的な距離を縮めること以上に、そこに至るまでの関係性作りが重要だと言えます。

※画像はイメージです
座る位置や距離感が相手の評価を決める!?「身体化された認知」
この説が一部本当である理由として挙げたのが、「身体化された認知」です。
身体化された認知とは、私たちの思考や感情が単に脳の中だけで完結するものではなく、身体の状態や周囲の物理的な環境(身体感覚)に深く根ざしているという考え方です。
なぜ「座る位置」や「距離感」といった物理的な要素が相手への評価を左右するのか。それは、私たちの脳が身体で感じた感覚(温度、硬さ、距離など)を、そのまま「人柄」や「親密度」といった心理的な評価へと無意識に翻訳してしまう性質を持っているからです。
例えば、「温かい人柄」や「冷たい対応」といった表現が日常的に使われるのも、物理的な感覚と相手への評価が脳内で密接にリンクしている証拠です。
つまり、「物理的な距離が近い(横並びで座る)」という身体感覚が、脳内で「この人と心理的な距離が近い=この人と親密だ」という評価に変換されるため、横並びで座ることで親密度が上がったように感じてしまうのです。
それゆえに、「横並びは親密度を高める」という説は一部本当だと言えます。
具体的には、以下のようなものが身体化された認知の例です。
- 位置関係: スティンザー効果で語られる、座る位置もその1つ。距離の近さや角度が親密さとしての認知を作り出す。
- 触覚・温度: 触れているものの硬さ(椅子の座り心地や衣類の肌触りなど)や飲み物の温度が、相手に対する「柔軟さ」や「温かさ」の評価に影響する。
- 視覚: 空間や着用している衣類の明るさなどが、相手の「明るさ」といった性格評価へと変換される。
- 嗅覚:においが精神的な概念や判断に直結する。例えば、クリーンな香りを嗅ぐと道徳的判断を厳しくさせ、ボランティアなどに興味を示しやすくなる。
- 重さ:重いものを持つと、物理的な重さの感覚が「重要性」という抽象的な概念に転換され、その対象をより重要人物と感じやすくなる。例えば、重厚感のあるメニュー表を手に取ったり、少し重みのある贈り物をやり取りしたりすることで、無意識に相手を「将来を見据えた重みのある存在(本命候補)」だと捉えやすくなる。
ただし、これらは全ての実験で同じ結果が出るわけではなく、中には効果が見られないとする報告もあります。そのため、効果は人や状況によって差が出ることもありますが、プラスアルファの「後押し」として取り入れることで、関係をよりスムーズにする助けとなります。
心理学の知見を味方につけつつ、結婚相談所のお見合いやデートで活用できる小技を3つご紹介します。
- 温かい飲み物をすすめる
温かい飲み物を飲んでいるとき、脳は無意識に「相手の人柄も温かい」と評価しやすくなります。夏場でも、冷房の効いたカフェで温かい飲み物を相手にすすめ、もし相手が温かい飲み物を飲めば、わずかですがポジティブな効果があると考えられます。 - 柔らかいソファーに座る
硬い椅子は「頑固さ」を、柔らかいソファーは「柔軟さ・リラックス」を連想させます。相手に「話しやすい、安全な人だ」と思ってもらいたいのであれば、フカフカのソファーがあるお店を選ぶのがおすすめです。 - 明るい色の服を着る
視覚から入る「明るさ」は、そのまま「性格の明るさ」としての認知につながりやすくなります。お見合いやデートで、暖色やパステルカラーなどの明るい色の服を着ることにより「明るい人」と印象付けることができます。

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お見合いや初デートでは横並びよりも「L字」がベター
実は、親密になる前のデートにおいて最も推奨するのは、横並びでも対面でもなく「L字型(90度)」の席です。
理由は、L字席なら視線を合わせて親密感を出すのも、視線を外して緊張を逃すのも「自然な所作」として振る舞いやすく、いいとこ取りができるからです。真正面から見つめ合う緊張感を避けつつ、適度な距離感を保てます。

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座る位置の親密度は、「対面 < L字 < 横並び」 の順に高くなります。そのため、出会ったばかりの関係では横並びは距離を詰めすぎになりやすく、逆に対面は緊張感が強くなりがちです。
だからこそ、お見合いや仮交際の初デート、友達以上恋人未満の微妙な時期のデートにおけるベターな選択は、その中間に位置するL字となります。
したがって、交際中の親密なカップルやマンネリ期でない限り、いきなりカウンター席を選ぶのではなく、まずはL字型の席を選んだほうが良い関係を築きやすくなると言えます。
「ガン見」に注意! 相手の目を見すぎることが親密度を下げる
デート中の視線の送り方には、実は細心の注意が必要です。
なぜなら、一般的に相手の目をガン見することは、動物の世界において威嚇や捕食(獲物を狙う)のサインだからです。 悪気がなくても、見つめ続けることで相手に本能的な恐怖や圧迫感を与えてしまうリスクがあります。
もちろん、コミュニケーションの基本として相手と目を合わせること自体は、決して悪いことではありません。むしろ、目が全く合わないと「自分に興味がないのかな?」という不安を抱かせてしまいます。
大切なのはバランスです。問題なのは、相手に圧迫感を与えるほど「ずっとガン見し続けること」なのです。

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では、具体的にどうすれば「ちょうどいい視線」を作れるのでしょうか。実践的なメソッドとして、以下のような視線の逃がし場所を意識してみましょう。
- 相手の鼻先やネクタイの結び目を見る: 視線を少し下げるだけで、圧迫感が和らぐ。
- 飲み物を飲む・メニューを眺める: 動作を挟むことで、自然に視線を外せる。
- 「ぼんやり」と全体を見る: 相手の目1点に集中せず、顔全体を柔らかく眺めるイメージを持つ。
このように「ちょうどいい視線」を作る上でも、自然に斜め方向に視線を外せるL字席を選ぶことは非常に有効な手段だと言えます。
また、こうした視線の送り方の癖は、人それぞれのコミュニケーションスタイルに深く関わっています。それを理解するカギとなるのが、ナレソメ予備校独自の診断プログラム「マッチグラム診断」です。

※出典:ナレソメ予備校
代表的なタイプに「オキモチ」「侍」「ロボット」がありますが、特に「侍」タイプと判定される人は、相手を深く理解しようと誠実に向き合うあまり、無意識に相手の目をじっとガン見してしまう傾向があります。他のタイプの人からすると、侍タイプの人に真正面から見つめられ続けることは、獲物として狙われているような恐怖を感じ、かえって緊張を強めてしまうのです。
自分のタイプを知り、特徴を客観的に把握することで、「頑張りすぎない、ちょうどいい距離感」の作り方が見えてくるはずです。
▶︎マッチグラム診断に関する詳しい解説はこちらをご覧ください
まとめ:テクニックは隠し味。多用しすぎは不信を招く
ここまで身体化された認知やおすすめの座る位置について解説しましたが、これらのテクニックの重要度は恋愛が成就するための要素のうち、ほんの数パーセントのトッピングでしかありません。
厳しいようですが、恋愛テクニックとはあくまでプラスの状態を1.1倍にするようなものであり、マイナスをゼロに戻す力はないのです。
例えば、清潔感がない人がどれほど完璧なL字席に座ったとしても、その効果は期待できません。テクニックは、すでに良い印象を持ってもらえているときに、さらに居心地のよさを高める隠し味として使いましょう。
また、最も避けたいのは、L字席がないからといってお見合いやデートの場所そのものを変えようとするなどの「奇妙なこだわり」です。雰囲気や料理を大切に選んだはずなのに、席の形を理由にプランをひっくり返されたら相手は困惑し、不信感を抱いてしまいます。
このような相手に違和感や不信感を与える行動は、恋愛の土台である「心理的安全性(安心して自分を出せる状態)」を大きく損なうことにつながります。
そのため、もしL字席に座れなくても深く気にする必要はありません。入ったお店にL字席があれば選ぶ、くらいの感覚で気楽に考えましょう。

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出会ったばかりの関係において、心理的安全性は親密さを育むカギになります。
テクニックに振り回されるのではなく、相手が自然体でリラックスできる環境をさりげなく整えられる人こそが、本当の意味で幸せな関係を築ける人なのです。

ナレソメ総研
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