アンジャッシュ渡部が語る「コミュニケーション術」。恋愛や婚活に使えるコミュ力をアップさせるための具体的な方法は、「話さない」こと

この記事を執筆した人▶︎yuzuka
恋愛エッセイスト・脚本家として活動。元精神科看護師と夜職の経験あり。Xのフォロワーは14万人を超え、多くの女性から支持を受けている。著書は『埋まらないよ、そんな男じゃ。』他3冊。原作提供・脚本には『五反田ほいっぷ学園』『愛の炎罪』『今、晒してます』がある。ナレソメノートの編集長。
アンジャッシュ・渡部建さん
お笑いコンビ・アンジャッシュとして、『爆笑オンエアバトル』(NHK)5代目チャンピオンに輝き、『エンタの神様』(日本テレビ)などのネタ番組で活躍。『FNS歌謡祭』(フジテレビ)『王様のブランチ』(TBSテレビ)ほか数々の人気番組で司会を務め、現在は“コミュニケーション”をテーマに企業向け講演を積極的に行っている。著書には、Amazonベストセラー1位を獲得した『超一流の会話力』(きずな出版)などがある。
コミュニケーション講師としての登壇は年間50社以上。
ブライダル業界の「呼びたいタレント」ランキングで第2位に入り、結婚式のスピーチVTRもこれまでに500本制作してきたというアンジャッシュの渡部さん。
キャスティングに当たっては「コメントは荒れると思いますよ(笑)。『おまえが言うな』『おまえが語るな』と言われるのは覚悟しています」と率直に語るが、紆余曲折を経た当人だからこそ語れる“実戦的なコミュニケーション術”が評価されているのもまた事実だ。
今回はそんな渡部さんに、「恋愛や婚活で使える、フェーズ別のコミュニケーション術」をたっぷり聞いた。
明日から実践できるものばかり。コミュ力を上げたい方は、ぜひ最後まで読んでほしい。
「初対面フェーズ」のコミュニケーション術

1章では「初対面」におけるコミュニケーション術について伺った。
お見合い、合コン、初めての食事や仕事の打ち合わせ――その後の関係がどう育つかは、この最初の数分にかかっているといっても過言ではない。
まさに勝負どころとなる「初対面」の場面で、アンジャッシュ渡部さんが考える“いちばん大切なこと”とは何なのか。
初対面で一気に距離を縮めるには、「自虐ネタ」を使え
――まずは「初対面編」です。渡部さんが思う、“初対面の人とすぐに距離を詰める方法”を教えてください。
渡部:お見合い、デート、商談……そういった「初対面」でいちばん大事なのは、「自己開示の返報性」だと思っています。
――自己開示の返報性?
渡部:はい。あえてこちらから自分の内側を見せることで、「じゃあ私もこれだけ見せようかな」と相手が返してくれることをいいます。心を開くきっかけになるんです。
そしてそのきっかけに使えるのが、“簡単なドジ話”です。
――いわゆる自虐ネタですね。
渡部:そう。多くのトップセールスマンがやっていることで、本当に小さなことでいいんです。
「昨日電車を乗り間違えちゃって」「今日靴下左右違うのをはいてきちゃって」みたいな軽い失敗談。
それだけで、相手の心理的ハードルが一気に下がるんですね。
これは犯罪心理学に基づいていて、刑事さんが容疑者に会う時にもわざとやるんですよ。
――どのような「自虐」が良いんでしょうか。
僕は、「失敗メモ」を作ることをすすめています。
自分の人生を振り返ってみると、小学校時代からめちゃくちゃ恥ずかしかった記憶ってあるじゃないですか。あれを全部メモる。それは、ものすごい財産になります。
失敗は人と仲良くなるための名刺として秀逸なので大事にすべきだと思っています。
それこそ僕自身、昔は「とっつきにくい」「冷たそう」「性格が悪そう」などと思われていて、それが悩みだったんですよ。
見た目がシュッとしていたし、キャラもあって(笑)。でも、今は会った瞬間にいじられる(笑)。
それで無敵になったんです。軽い自虐って、いちばんリスクがなく、滑っても誰も傷つけない。
――でも、初対面で自虐するとなめられたり、引かれたりしませんか?
渡部:「かわいい自虐」と「ダメな自虐」の差はありますね。
「寝坊して電車に乗り遅れそうになった」「今日が大事な日で緊張しちゃって、眠れませんでした」くらいなら、絶対に好印象になります。
一方、「借金8億できまして……」は重すぎる(笑)。女性は特に、容姿に関する自虐は避けたほうがいいかもしれません。
ただ、ユーモア術としていちばんリスクがないのが「自虐」なんです。滑っても誰も傷つけない、滑ったこともわかりにくい。
だから自分の「軽い失敗談」は、今見ている人も思いつく限りで書き出してみるといいかもしれません。
初対面で相手の印象に残るには、「メリット」を提示せよ
――人気の男女は、複数人からアプローチされることも多いと思います。その中で印象に残ってそのまま次につなげるためには、どのように接すれば良いでしょうか?
渡部:“メリットを提示する”ことです。これはね、ビジネススキルと全く同じなんです。
例えば異業種交流会で自己紹介するとき、「僕、父親がディズニーランドを経営していまして。もしディズニーに行きたい方がいらっしゃったらチケットをご用意できますので、ぜひよろしくお願いします」と言ったら、絶対覚えられるじゃないですか。「あ、この人と仲良くしたらディズニーに行けるかも!」って(笑)。
もちろん、そこまで大きなことである必要はありません。でも、「ミニミニメリット」を自己紹介に入れるだけで相手の頭に、強く印象が残ります。
――会話にメリットを仕込ませて、印象づけるわけですね。
渡部:そうです。例えば、ディズニーランドじゃなかったとしても
「ラーメンが大好きで、渋谷区のラーメンは全部制覇しました。渋谷でラーメンに困ったら僕に聞いてください、渡部です」
「整体師の経験があって、マッサージは何時間でも苦にならないんです、渡部です」
「僕、配線関係はなんでもできるので、なにか困ったら声かけてください、渡部です」
こう言われたら、ちょっと覚えません?「この人と知り合っておいたらなにかのときに役に立つかもしれないな」って。
人間って最初は、やっぱり“得があるかどうか”でしか、人を覚えないんですよ。
例えば女性なら、「私、押しに弱くて」とか「お酒が弱くて」とかも、実は男性からするとメリットなので覚えやすくなると思います。
――なるほど。
渡部:だから僕、若いビジネスマンにはよく言うんです。「今すぐゴルフなんてやめて、食べ歩きに全振りしろ」って(笑)。
僕自身、ビジネスでは「おいしいお店をたくさん知っている人」として覚えられることが多いです。
商談の時に「いい店ないですか?」と聞かれてもぱっと答えられるし、「あそこに行ってみたいけど、予約が取れなくて……」と言われたとき、「あ、予約取れますよ」と予約まで押さえたら、もうこっちの勝ちじゃないですか。
恋愛も同じです。「行ってみたい」と言われる店に、「行けるよ」と返せるのは大きな武器になります。
ゴルフって一部の人にしか通じないけど、食は全人類共通。おいしいものを探して食べる経験そのものが情報になり、魅力になる。
だって僕、グルメ王とか言われてますが、実際に店に行って食べてるだけですからね(笑)。それで肩書きになる。
お店をやるわけじゃなくて、ただ食べに行けばいいだけ。これほど簡単で得な趣味はないですよ。
友達以上恋人未満。最後に選ばれるためのコミュニケーション術

次に取り上げるのは、「友達以上恋人未満」というあいまいな関係性。
結婚相談所では、「仮交際」。恋愛や婚活では、「付き合うまでのデート期間中」だろうか。
優しさだけでは都合のいい存在にされてしまう、でも押しすぎても引かれてしまう――そんな難しい局面で、渡部さんが語る“選ばれる人”になるための会話の仕方を聞いた。
会話を続ける上で大切なのは、「話さない」こと
――デートを続けてコミュニケーションを取っていく中で、意識すべきことはなんでしょうか?
渡部:僕は「話さない」ことを意識しています。
――話さない!?
渡部:そう。なぜなら、人間がいちばん好きなのは「自分の話」だから。人は自分の価値観や経験を話すとき、脳内で快楽物質が出まくります。人は、自分の話がめちゃくちゃしたい。だから僕は基本的なスタンスとして、「しゃべらない」んです。
婚活や、営業職の人だと、「自分をアピールしなきゃ」「売らなきゃ」と、ついつい話すことに集中してしまいがちです。
でも、営業でも恋愛でも「聞く側」が圧倒的に強い。トップセールスでおしゃべりばかりの人はいません。「聞き上手」ばかりです。
「おもしろい話をする人」と「熱心に話を聞いてくれる人」なら、後者にまた会いたくなる。
僕は32年お笑い芸人をやってますが、トークで全てを凌駕することなど、完全に無理だと思っています。どれだけ話がおもしろくても、それだけで物が売れたり、婚活で勝ち残ったりすることはない。
だからおしゃべりが苦手な人ほど、“相手の話を楽しそうに聞き出すこと”だけに集中すればいい。「何を聞いたらこの人は楽しく話してくれるかな」。これに全集中。これ以外は何も考えない。
僕はいつも「相手のしゃべった文字数が多いほうが勝ちのゲーム」だと思って挑んでいます。繰り返し上司の愚痴を言うのでも、文字数が多いならそれでいい。そう思うとコミュニケーションのやり方がわかりやすいんですよね。
――自分の話は、極力しない。
渡部:そう。例えば、いまはSNSで相手の情報がたくさん拾えるでしょ。プロフィール、趣味、直近の旅行先、ペットの写真とか。
多くの人は、共通の趣味を見つけると、自分の話をしてしまうんですよ。「僕も犬飼ってるんです!」から始めてしまう。
だけどそこをぐっと我慢して、「何犬なんですか? 今までにも犬を飼われてたんですか? 名前は?」ってどんどん掘れば、相手は喜んでしゃべってくれる。
そして最後に聞かれるんです。「え、とても詳しいけれど、もしかしてあなたも犬を飼ってますか?」
そこで初めて自分のことを話す。それでいいんです。シンプルでしょ。トークスキルはいらない。おしゃべり下手でも、人見知りでも大丈夫です。
沈黙はチャンス。相づちは、チューニングで乗り切れ
――でも、聞くことに徹すると、沈黙が怖くないですか?
渡部:全然怖くないですよ。むしろチャンスです。「沈黙でも心地いい」と示すことが大事。沈黙を怖れて次の質問を考えながら話を聞くと、何が起こると思いますか?「次はこれを聞かなきゃ」で頭が持っていかれて今の話に集中できず、薄い相づちが出て、相手に「聞いてない」と思われてしまう。そうなると全然意味がない。
だからとにかく“全集中で聞く”ことが大切なんです。相手が話しているときは、ひたすら「えーそうなの? すごい! へえ!」と相づちに徹する。
――「相づち」にもコツはありますか?
渡部:1つだけ。チューニングです。「相手のテンションに合わせる」こと。
テクニックは不要。何秒に1回は目を見るとか、ああいうテクニックは全部忘れてください。
テンション高く「昨日さ〜!」って話しかけられたら「え、なになに!?」と、同じテンションでノる。
「昨日嫌なことがあってさ……」と相談されたら同じトーンで「……どうした? なにかあった……?」と聞く。
相手のテンションに合わせて聞くだけでいい。合いの手って難しいと思われがちだけれど、実はすごくシンプルなんです。
――ひたすら相手の感情に寄り添って、同じテンションで相づちを打てばいいんですね。
渡部:そうです。そして「今、相手が何を言っているか」に全集中する。聞き終わってから次の質問を考える、を徹底するんです。それだけで、相手は「この人、ちゃんと聞いてくれているな」って感じます。
それこそ僕、番組でインタビューを受ける仕事を長年やってきたんですけど、しゃべっている側からすると「この人、次の質問を考えてるな」とか、「話を聞いてないな」ってすぐバレるんですよ(笑)。
だから焦らず、沈黙を受け入れて、相手の話を聞く。その積み重ねが、信頼される会話になるんです。
選ばれたいなら好意を伝え、「展開・解決」をするな
――聞き上手に徹することが大事なことはわかりましたが、デートを続けていく中で、「優しさが裏目に出て、都合のいい人にされてしまう」ケースもありますよね。恋愛では「いい人止まり」になってしまうことも。防ぐための方法ってあるのでしょうか?
渡部:まず、「ちゃんと自分の好意を伝えていますか?」ってことです。僕は、好きな人に好意を伝えずに我慢するなんて無理。伝えなかったら時間の無駄じゃないですか?
「一緒にいて楽しい」「また会いたい」とライトにどんどん伝えることはとても大切。そうしないと相手からしたら、“ただの優しい人”で終わっちゃいますよね。ちゃんと「あなたにだけ特別な好意を持っています」と示さないと、伝わりません。
人は「好意を持ってくれたから好きになる」ことが多い。これは心理学でいう“返報性”です。「私のことをいちばん理解してくれる人」と思わせることができれば、大きな差がつきます。
――どうすれば「この人は私を理解している」と思わせられるのでしょう?
渡部:究極の聞き方は「展開・解決をしない」ことです。男性はこれをしてしまって、女性に嫌われるんですよね……。
例えば女性が「駅から歩いてきたら急に雨が降って濡れちゃって……」と話したとします。
多くの男性は「どうして傘を持っていかなかったの?」「このアプリを登録しておけば、今度からちゃんと天気予報が見られるよ」と“展開・解決”をしてしまう。
でも女性が求めているのはそれじゃない。「えぇ、大変だったね。そうなんだ、濡れちゃったんだね。大丈夫だった? ねえ、雨ね……」と、ひたすら感情に寄り添うこと。これが全てです。
男性って、頭が良くて有能な人ほどつい解決策を出したくなる。でもぐっと我慢して「感情に寄り添う」だけでいい。
大好きな人の話なら、オチがなくても楽しいはずですよね? もし「疲れる」「つまらない」と思うなら、その女性を本当に大切に思っていない証拠だと思いますよ。
僕だってその状況だったら、「天気予報見ろよ」「なんやねん、そのオチのない話」と、のどから出かけますよ(笑)。でも、言わない。
これは練習で鍛えられます。おすすめは「1分間、自分の話をしないトレーニング」。やってみるとめちゃくちゃ難しいですよ(笑)。トークに自信のある人ほどできなかったりする。
会話が滑った時の立て直し方は、「相手のせいにしない」こと
――一生懸命会話をした結果、「会話が滑ったときの立て直し方」を教えてください。
渡部:男性がやりがちな、いちばんダメなパターンは「なんで笑わないの?」と相手に責任を押し付けること。滑ったら潔く「ごめん、今の話チョイス間違えたわ」と自分のせいにする(笑)。それが大事かな。
そんなことより、逆に女性が話して滑りそうになったときのほうが大切。簡単ですよ、とにかく笑ってあげること。そうすれば「この人の前だと楽しい」「なんだか自分のトークの調子がいい」と思ってくれる。それだけでまた会いたい人になるんですよ。
男性って「笑わせなきゃ」と思うあまり、相手が話すときにかたくなりがち。でも大事なのは何度も言っている通り、“聞く側”に徹することです。
恋人になってからも気をつけたい、コミュニケーション術

次の章では、「恋人になってから」のコミュニケーションについて伺った。
好き合っているからこそ、伝えたいことを飲み込んでしまったり、逆に衝突してしまったりする瞬間がある。
順調に見える関係ほど、実はすれ違いの種を抱えているもの。そんなときに大切になる、渡部さん流の“長く続くための会話術”とは。
本音を伝えるには、ワクチンワードを接種させよ
――じゃあ続いて、ここからはもう「お付き合いしてから」、結婚相談所でいうといわゆる真剣交際ってことなんですけど。そこで出てくるのが、「空気を読みながら本音を伝える」ことの難しさです。
デリカシーなく言い過ぎても正しく伝わらないし、言わなくても問題が起きる。大切な相手に良いあんばいで本音をぶつけるコツって、ありますか?
渡部:難しいんだけど、そこで役に立つ簡単な“トークのテクニック”として、僕は「ワクチンワード」を打つ、をやるようにしていますね。
――ワクチンワード。
渡部:そう。例えばインタビューで聞きづらい内容に踏み込むとき、いきなり聞くんじゃなくて、「すみません、ちょっとこれ聞きづらいんですけど……。もし嫌な気持ちになったらごめんなさい。元カレの話、少しだけ聞いてもいいですか?」って、前置きをしてから本題に入るんです。
「今からあなたにとって言いにくい話をしますよ」って心構えをしてもらうために、ワクチンを打つイメージ。
音楽番組でもよくあるのですが、例えばミュージシャンの方って、プロモーションで何十番組も回って、「このアルバムの魅力は?」なんて同じ質問を聞き続けられているんですよね。実際うんざりして、答えたくなくなってしまう方もいる。でも、番組としては聞かざるを得ないわけで。
そんなときに、「この質問は何度も受けていてお疲れだと思うんですが、改めてアルバムの魅力を教えてください」ってクッション言葉を置くんです。それだけで、相手は「その前提をわかってくれてるんだな」って受け止めて、ちゃんとしゃべってくれる気になる。
僕自身も「アンジャッシュのコンビ名の由来って……」と何度も聞かれているけれど、「改めてで恐縮ですが」と入れられると「じゃあ……答えようかな」って気持ちになるわけです。
家庭でも同じで、ワクチンワードが大切。「水道の蛇口、また開けっぱなしなんだけど!?」と怒るんじゃなくて、「本当にごめん。1つだけ嫌なことを言ってもいい? 水道の蛇口がまた開けっぱなしになってたから、閉めてほしいな」みたいな伝え方をすると、頭ごなしに伝えるよりも相手にすんなりと入りやすいですよね。
言いづらいことほど「ワクチン」を打つ。これが大事です。
――ワクチンワードがあるだけで、「空気を読んでる」ことが伝わり、そして本音も入りやすい。
渡部:そうそう。そのまま伝えても衝突する。言わなくても、いつか爆発してしまう。だから本音を投げる前に、まずワクチンを打ってください。
渡部さんにとって、コミュニケーションとは? 究極の「話し上手」が「聞き上手」に特化した理由

最終章では、渡部さん自身にとっての「コミュニケーション」とはなにかを掘り下げた。
ネタ番組や司会業で“話し上手”として評価されてきた彼が、なぜ今「聞き上手」に特化するスタイルへと行き着いたのか。そこには、数え切れないほどの対話の末にたどり着いた“究極の答え”があった。
「40代で『質問上手が最強』に落ち着いた」渡部さんを変えたのは、ラジオ番組の「野宿回」だった
――さて、話のプロである渡部さんですが、全体を通して「話すこと」よりも「聞くこと」「引き出すこと」の大切さを説かれていたイメージです。
渡部さんご自身がその部分を磨くことになったキッカケとなる体験があったのでしょうか?
渡部:僕、J-WAVEのラジオ番組で、一般の人を呼んで2時間しゃべる……という生放送を3年間毎日やっていたんですね。当然お相手は話し慣れていないから、最初のうちは「俺のトークで持たせなきゃ」と思って、とにかく自分がしゃべっていた。だけどそれでは、いまいち人気が出なかったんですよ。
そんなある日、『野宿野郎』っていう野宿専門の超マニアックな雑誌の女性編集長がゲストに来たんです。さすがに野宿なんて知識もないし、お手上げ状態。お相手も最初は全然しゃべってくれなくて、最初はマジでやばいと思った(笑)。
それで仕方なく、疑問をそのままぶつけることにしたんです。「なんで“キャンプ”じゃなくて“野宿”なんですか?」とか。純粋に興味を持ったことをひたすら質問したら、だんだん彼女が熱を持って語り始めて、それがめちゃくちゃおもしろくなったんですよ。その回はリスナーの反応も抜群でした。
――逆転の回ですね。
渡部:そこで気づいた。「自分がおもしろいことを言おう」じゃなくて、「相手がいちばん熱量を持ってしゃべれるスイッチを押す」ことが大事なんだって。
それ以降、トークスタイルを質問ベースに180度切り替えたら「ゲストがのびのびしゃべる番組だね」って評判がついて、MCの仕事も一気に増えました。それをビジネス書にまとめたらAmazonで1位になりました。
いろんな講演の機会もいただいたのでトップセールスマンに話を聞いてみたのですが、結局みんな基本は僕と同じメソッドなんですよ。とにかくヒアリング、ヒアリング、ヒアリング。
商品を売るのですらそう。ひたすら聞いて引き出して。すると最後に「で、君、何を売ってるの? いいやつだし買うよ」と結果が出る。
恋愛でも全く同じで、“相手が楽しくしゃべれる仕掛けをいっぱいする”のが基盤なんです。
――話すことよりも聞く、そして引き出す。
そう。僕も20代は、「おもしろいことを言ってナンボ」だと思ってひたすらしゃべっていました。だけどそれではモテない(笑)。
それで30代は「聞き上手が大事」に振り切ったけど、今度は自分の魅力が伝わりづらい面も出た。
で、40代で「質問上手が最強」に落ち着いたんです。
――ちなみに芸能界で渡部さんが「この人のコミュ力はすごい」と感じた人はいますか?
渡部:いっぱいいるけど、やっぱり笑福亭鶴瓶さんですかね。NHKの『鶴瓶の家族に乾杯』って、知らない町に行って一般の方と絡むロケ番組があるんですけど……。僕なんかだと、つい街の人たちを“どうおもしろくイジるか”を考えてしまうんですよね。でも、鶴瓶さんは違う。“構えさせない”ことを最優先する。
ふらっと現れて「おばあちゃん、いま何してんの?」「漬物? ちょっと食べさせて」って自然に会話をする。テレビカメラがあって、目の前に鶴瓶さんがいるのに、いつの間にか相手が“いつも通り”の自分でしゃべっちゃう。現場がものすごく風通しよくなるんですよ。あれは彼にしかできない。
あとは、「おもろかったら何してもええんや」っていう受容力も高い。何をしても絶対に怒らないと思わせる空気を作るのがうまいんです。例えば僕がいきなり頭を殴っても、おもしろければ絶対に怒らないんです。だから同業者からもめちゃくちゃ好かれています。ダウンタウンさんから若手まで、幅広く愛されている。
僕は、芸能界でも茶の間でも、いちばん好かれてるのって鶴瓶さんじゃないかなと思っています。みんな好きでしょ? あの“構えさせない力”が、本当の意味でのコミュ力の中核だと思います。
――理想的だけど、いちばん難しい境地でもありますよね。渡部さん自身は、昔はどちらかというと“構えさせる側”の芸風で、それを変化させていったのですね。
渡部:そう。人見知りだし、心を開くのも得意じゃなかったから、とっつきにくい印象もあった。でもスタイルを変えてからは、だいぶ過ごしやすくなりましたね。
「コミュ力アップ=トーク力アップ」ではない。渡部さんにとってコミュニケーションとは
――渡部さんにとって、コミュニケーションを磨く上で、最も大切なことはなんですか?
渡部:繰り返しになりますが、とにかく「相手にいっぱいしゃべってもらう」ことです。そのために、相づちは大きく、おもしろければちゃんと笑う。悩みがあれば真剣に聞く。ここだけ。
もちろん、限られた時間で自己PRが必要な場面もあるけれど、“50人の中で最も魅力的”を、トーク力だけで証明するのはすごく難しい。
それよりも「また会いたい」「この人とずっと一緒にいたい」「大勢の中でもこの人としゃべりたい」と思われることのほうが大事で、そのためには今日話した「引き出すことに徹する」姿勢がいちばん効くと思います。
――最後に、渡部さんにとって「コミュニケーション」をひと言で言うと?
渡部:ひと言は……難しいですね(笑)。でも、「コミュ力アップ=トーク力アップ」ではない、ってことは強調したい。「コミュ力アップ=人間力アップ」。相手を理解したい、楽しませたい、その姿勢の積み重ねだと思います。

今回のインタビュー、渡部さんが到着する前、スタッフ一同は緊張に包まれていた。
失礼があってはいけないと、言葉を選びに選んだ質問を手に、固唾を呑んでその瞬間を待つ。
しかし、ドアを開けて入ってきた渡部さんは、第一声から自虐を交えたジョークで場を沸かせ、一気に空気を和ませた。そこから先は、話すこと全てが“撮れ高”。私たちの言葉にも大げさなくらいのリアクションで応じてくれ、その受容力に圧倒された。
率直に言えば――「すげえ、ホンモノのコミュニケーションのプロだ」と感じた瞬間だった。
今回まとめた「アンジャッシュ渡部のコミュニケーション術」は、話すことが苦手な人でも、明日からすぐに試せるメソッドが多い。ぜひ実践してみてほしい。
また、コミュニケーションに苦手意識があり、恋愛や婚活でうまくいかないと悩んでいる方には、ぜひ結婚相談所ナレソメ予備校の無料面談をおすすめしたい。
ナレソメ予備校では今回も卒業生向けに「アンジャッシュ渡部の“人間関係を維持するためのコミュニケーション術”」をテーマにしたトークセッションを開催。
オフラインだからこそ語れる話で大いに盛り上がった。

さらに、コミュニケーション力を養うゼミや、恋愛心理学者によるサポートなど、関係構築が苦手な人を支えるプログラムも用意している。
今回紹介した実践メソッドに加え、ナレソメ予備校で学んでいただければ、あなたの人生は間違いなく大きく「変わる」だろう。

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