育休中にライブへ行って何が悪い? 勝倉が「もっと好きにすれば」と考える理由
3人の子どもを育てながら資格を取得し、旅行やライブも楽しんだ――。そんな育児休業(育休)終了の報告がXで拡散され、職場への負担や制度の使い方をめぐる批判が相次いだ。育休を取る人は、どこまで周囲に配慮すべきなのか。経営者でもあるモテコンサル勝倉が、個人、企業、社会という3つの視点から考える。
モテコンサル勝倉
株式会社ナレソメ取締役、結婚相談所ナレソメ予備校塾長。1989年生まれ東京都出身、上智大学卒。新卒で(株)三菱UFJ銀行に総合職として入行し、外資系ファンド向けの不動産ファイナンス業務に従事。2019年に退職し、モテコンサルタントとして起業。結婚に関するニーズの高まりを受け、代表の宇波と結婚相談所「ナレソメ予備校」を設立。株式会社ナレソメでは塾長としての顧客サポートに加え、コンサル・プランナーを統括するサービス部の管掌役員を務める。
育休取得は職場復帰を前提にすべき?

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3人のお子さんを出産し、育休中に次の子を妊娠・出産する形で、約3年8か月にわたって育休を取り続けた女性の投稿が、Xで話題になっていました。
育休中、その方は3人の子どもを自宅で育てながら、ソーイングや編み物を習得し、ピアノを始め、複数の資格も取得。家族で沖縄や北海道へ旅行し、毎年L’Arc〜en〜Cielのライブにも足を運んでいたといいます。そして「最高に充実した3年8か月だった」と振り返り、時短勤務での職場復帰を検討しつつ、転職も検討しているのではないかと捉えられる発言もあったそうです。
ところが、この投稿が炎上しました。
「長期間の育休によって職場の人に負担をかけているのではないか」
「旅行やライブを楽しむ余裕があるならもっと早く復帰できたのではないか」
「そもそも職場復帰する前提になっていないのはおかしいのではないか」
このような批判が集まったのです。
育休くらい、もっと好きに取ればいい
この炎上を見て、ふと思いました。
別にいいんじゃないでしょうか。育休くらい、好きに取れば。
正直、育休について社会全体がもう少し寛容になってもいいはずです。もちろん、不正受給や意図的なルール違反はダメです。ただ、制度の範囲内で育休を取り、その時間に育児以外のこともしたからといって、そこまで目くじらを立てる必要はないでしょう。3人の子どもを育てながら、資格も取り、ライブにも行き、経済活動もしている。むしろ「生産性が高い!」と驚くほどです。
育休中だからつつましくしていなければならない、楽しそうにしてはいけない、というのは果たして健全なのでしょうか。育児をしている人にも楽しみがあることを、もう少し前向きに受け止めてもいいはずです。
復職できなければ「裏切り」なのか

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そもそも育休は、休業後に元の職場へ復帰することを前提にした制度です(※)。会社の立場からすれば、戻ってきてもらえたらありがたいです。また、ナレソメには育休を取得する(もしくは取得した)社員が多く在籍しています。育休後に復帰してくれた社員も多く、経営者として本当にありがたい限りですし、これからも戻りたいと思ってもらえる会社であり続けたいと思っています。
ただ、社員も出産前と出産後では、生活条件が大きく変わります。仮に子どもが3人いれば、自由に動ける時間も、出社できる頻度も、仕事に使える体力も変わってきます。以前と同じ部署、同じ時間、同じ働き方で復帰するのが難しいこともあるでしょう。そうすると出社が前提の仕事を続けられず、より柔軟な働き方ができる職場へ移ろうとする人が出てくるのも自然なことです。元の職場に戻り、以前と同じように働くのが最も筋が通っているということも理解できます。しかし、現実にはそれができない人もいます。
だから、戻れないならもうしょうがないと私は考えています。育休を取得し始めたときは復職するつもりでも、実際に子どもを育て始めると続けられないことはあります。その変化まで裏切りや制度の悪用と呼ぶのは、少し厳しすぎるのではないでしょうか。
※参考:厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」
同僚の負担は、経営陣が引き受ける問題でもある

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育休をめぐる批判の中で、懸念として残るのは「同僚の負担増」です。1人が長期間抜け、その仕事を周囲が引き受ける。人員は増えないのに業務量だけが増える。現場で働く人からすれば、「自由に育休を取ればいい」とは言いづらいでしょう。
ただ、それは本当に育休取得者だけの責任なのでしょうか。半年や1年の不在が分かっているなら、その穴をどう埋めるかを考えるのは「経営の役割」です。新しい人を採用する、別の部署から人を動かす、業務量そのものを調整する。どのように人員を配置し、仕事を回すかは組織側の設計の問題です。
それでも人が補充されないのであれば、採用が難しいのか、あるいはその人数で回せると会社が判断しているのかもしれません。いずれにせよ、それは育休そのものの問題というより、会社の人員計画の問題といえます。
一部では「女性が育休ばかり取ると、企業は男性を優先して採用するようになるのでは」と危惧する声もあります。しかし、現実の労働市場はそこまで甘くありません。そもそも日本の労働人口は減少し、働き手の供給が極めてタイトな状態です。企業側に「女性を完全に排除して男性だけをえり好みできる」ほどの余裕は、もうないのが現実です。
育休を取った人に怒りが向きやすいのは理解できますが、本来は経営陣が引き受けるべき負担まで、個人同士の対立にしてしまうのは違うと思います。
「産め、育て、働け」を完璧にこなすのは無理

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今の社会は、個人に多くを求めすぎているのではないでしょうか。
少子化だから子どもを産んで、人口を維持してほしい。
働いて生産性も上げてほしい。
さらに、育休中には学び直しもしてほしい。
これらを全て1人で完璧にこなすのは、現実的ではありません。
残された側の負担というミクロな視点で見れば、「自分がこんなに我慢して支えたのに」と腹が立つこともあるでしょう。
しかし、もう少しマクロな視点で考えてみてください。2人の夫婦から3人の子どもが産まれるのは「人口の純増」です。日本の人口が維持されなければ、やがて社会のあらゆるインフラは崩壊してしまいます。だからこそ、これから産まれる子どもたちは、私たちの将来の生活を維持してくれるかけがえのない存在なのです。
その認識を持ち、「日本の人口と経済に寄与してくれてありがとう」という感謝の気持ちも持てば、L’Arc〜en〜Cielのライブくらい行っても腹は立たないはずです。
SNSの声で、自分のハードルを上げなくていい
では、なぜこうした投稿がここまで激しくたたかれるのでしょうか。
そこには、未婚・独身・子なし層の「自己正当化のインセンティブ」という深い闇があるように感じます。「子どもを産み育てるのは社会にとって良いことだ」という命題をすなおに認めてしまうと、未婚・独身・子なしの方は、自身の立場がなくなってしまうような感覚に陥りかねません。だからこそ、自分の立場を守るために「子どもを産むのはエゴだ」「大したことではない」とたたいてしまうこともあるのです。
シビアな予測をすれば、この分断は今後X上でさらに広がるでしょう。これまで女性たちは「旦那の愚痴」を仮想敵として連帯していました。しかし、これから独身女性が増える日本社会では、「未婚・独身・子なし女性」が「既婚・子あり女性」を大きな声でたたき、共感コミュニケーションで連帯を深め、先鋭化していくと思います。
このようなSNSの構造を知っていれば、「子どもを産んだらたたかれるのではないか」「育休を取るなら、完璧に復職しなければならないのではないか」と必要以上に不安になることはありません。SNSでのバッシングは、それぞれの立場の不満や自己正当化の裏返しにすぎないからです。
結婚して子どもを産み、できる範囲で働く。育休中に勉強する。旅行にも行くし、ライブにも行く。それでいいのではないでしょうか。「子どもは国の宝」くらいの気持ちで、もう少し温かく見守る社会のほうが、結果的にみんな楽になるはずです。
誰かの人生を細かく採点するよりも、「育ててくれてありがとう」「楽しんでいいよ」と言える空気のほうが、健やかだと思います。
監修:モテコンサル勝倉
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